生物から見た世界

投稿日 2006年3月6日

生物から見た世界は,わたしたち人間が見る世界とはまるで異なった世界に住んでいる。わたしたちのそばにミツバチがぶんぶん飛んでいるから,同じ世界に住んでいるとおもいこんでいるが,彼らは赤い花の存在しない世界に住んでいる。彼らの視覚は赤い波長を感じないのだから。そのかわり,わたしたち人間には見えない紫外線が見えている。というわけで,わたしたち人間が世界と思い込んでいるものも,実はわたしたちの知覚によって限定されたものだ。もちろん物理学者はもっと異なった世界を考えているが,それにしても全宇宙の一部分のことしかわかっていない。つまり「地図は現地のすべてをあらわすわけではない」という一般意味論の原理を生物の知覚の側からなっとくさせてくれる1冊の本が,ユクスキュル『生物から見た世界』だ。最近,新思索社から新版が出たので,うれしかった。もっとしらべてみたら,岩波文庫でも出ていることをわたしは知らなかった。