無防備都市

投稿日 2008年5月22日

『無防備都市』というものがあることを詩人の矢口以文さんから教えられた。
「ジュネーブ条約というものがあって,市がその条約を制定し,それを宣言すると,地域全体がどこの国からも攻撃されないというのだ」と彼は『新現代詩』第4号,2008年5月初夏号に書いている。「ただしそれには4つの条件がある。即ち,(a)すべての戦闘員が撤退しており,すべての移動可能な兵器および軍用設備が撤去されていること。(b)固定された軍事施設の敵対的な使用が行われないこと。(c)当局または住民による敵対的な行動が行われないこと。(d)軍事行動を支援する活動が行われないこと。」
 札幌を無防備都市にしようということで,矢口さんたちは市民の会を結成し,1ヶ月の間に有権者の50分の1の署名を集めなくてはならなかった。結局は法定数を上回る41629人の署名が集まり,条例制定を札幌市長に請求した。結局は2007年12月の市議会で否決されたのだが,矢口さんはそこで意見をのべるにあたって,詩を2つ読んだ。ひとつは『基地の町』で終戦前に彼が住んでいた松島海軍航空隊のある町が,まわりはぜんぜん攻撃されないのに,その町だけが,徹底的に空から攻撃された。もうひとつは『前島』という沖縄の島は,分校の校長や村人たちが日本軍の駐留を必死でことわったので,そこだけは米軍に占領されなかった。
 ジュネーブ条約にこのような良いものがあるとは知らなかった。だれも教えてくれなかった。これはすべてのひとが知っておくべきことだ。ここでもうひとつ思い出すのは,軍隊や官僚組織のなかで上官や上司に非人道的な行為をすることを命令されても,それを拒否できるために,ニュールンベルクなんとかという国際的なきまりがあるということを,エバ・ライヒから聞いた。このことも詳しく知っておきたい。
  『新現代詩』4号は900円+税で,龍書房から発売されている。Tel:03-3288-4570 Fax:03-3262-5443